入院医学管理料と看護料
入院の費用は診療報酬制度により入院医学管理料・入院環境料・看護料・食事療養費が定められており、それに治療費(薬剤費・注射)・検査料・手術費・処置費・リハビリ・指導料などが加算されます。
このうち入院医学管理料と看護料は施設の基準や看護の基準によって、診療点数が大きく異なり、また入院期間によって入院医学管理料は大幅な逓減がされるようになっています。(表-1)
高度医療を行う急性期病院では2週間以内の入院では入院時医学管理料は1日770点ですが6ヶ月を過ぎると121点となりますし、特に老人では90点と大幅に逓減されます。
平均在院日数28日を超える一般の市中病院では2週間以内が522点ですが、6ヶ月以上は121点のままです。この様に一般病院では平均在院日数により点数が異なります。
一方老人病棟は急性期の入院医学管理料が老人219点と低く設定されておりますが、6ヶ月を超えると急性期病院より高い140点となっています。
また看護料も数十種類の分類があり看護婦、准看護婦の数、正准比、介護補助者の数などで、細かな設定になっています。
例えば高度の看護を行う2:1看護の病院では最高750点、4:1看護で看護補助10:1の病院では439点、6:1看護で介護力強化の老人病院では348点等となっています。
2:1看護とは入院患者さん2人に看護職員1名という看護基準です。
これらの入院費(入院医学管理料・入院環境料・看護料・食事療養費)を算定してみますと高度医療の病棟では2週間まで1日1912点、6ヶ月を超えると1229点(老人1198点)、平均在院日数28日超える4:1看護で看護補助10:1の病院では2週間まで1日1353点、6ヶ月を超えると918点(老人887点)、老人病棟では2週間まで1日969点、6ヶ月を超えると880点となります。
非常に複雑な仕組みで、入院費はその医療機関によって大きく異なるのです。しかも患者さんにはわかりません。
この様な点数が何を基準に決められたかも良く解りません。
一般病棟へ6ヶ月以上入院の老人患者の看護料大幅削減
ところが今回の診療報酬改定で平成10年10月より、一般病棟に入院している老人患者さんでは特殊な状態を除き、6ヶ月を過ぎれば看護料を1日250点にしてしまうと言う改定となりました。と言うことは(表-1)でもお解りの通り一般病棟では最高716点が250点に削減されるわけで、看護基準によらず一般病棟の老人患者の入院費はほぽ同じとなります。
これだけ大幅な削減では、これら一般病院では老人の6ヶ月を超える入院は不可能とも言える改定です。
従って病院の平均在院日数の基準とも合わせ一般病院では老人の早期退院誘導が行われるわけで、脳卒中や呼吸不全、心不全、在宅の出来ない慢性疾患の老人は行き場をなくしているのです。
また一方では今まである老人病院は平成12年度には廃止されることも決まっています。そのため老人病院や市中の一般病院では厚生省の指導で長期療養型病床群に移行するか一般病院で生き残るかの選択を余儀なくされています。一般病院を選択すれば長期入院の老人は引き受けることが出来ません。そこで長期療養型病床群の病院に変更する方針の病院もありますが、ここでまた大きな問題が発生しました。
この問題は後で述べますが、一般病棟へ6ヶ月以上入院の老人患者の看護料大幅削減は老人患者は長生きするな、看護・治療はするなという厚生省の考えだと思います。
すでにこの問題は日常診療ではっきりしていますが、10月以降もっと混乱するものと考えます。
老人の長期入院を追い出す政策でしょうが、医療現場に大混乱を来す制度には早急な対応を考える必要があります。
入院時医学管理料 | |||||
一般病棟 | 2週間以内 | 2週間-1ヶ月 | 3ヶ月超 | 6ヶ月超 | 10月より |
平均在院日数20日以内 |
770 | 405 | 140 | 121 | 121 |
平均在院日数28日以内 |
615 | 405 | 150 | 121 | 121 |
平均在院日数28日超 |
522 | 405 | 190 | 121 | 121 |
一般病院の老人 |
上の基準 | 90 | 90 | ||
老人病棟一般患者 | 219 | 219 | 155 | 129 | 129 |
老人病棟老人患者 | 229 | 229 | 165 | 140 | 140 |
入院環境料 | 165 | 165 | 165 | 165 | 165 |
入院食事療養 | 192 | 192 | 192 | 192 | 192 |
特別食加算 |
35 | 35 | 35 | 35 | 35 |
新看護料 | 老人患者 | ||||
2:1看護、正准比A |
750 | 750 | 738 | 716 | 250 |
正看比B 看護補助 10:1の場合 |
|||||
3:1看護 |
594 | 594 | 582 | 558 | 250 |
4:1看護 |
439 | 439 | 427 | 405 | 250 |
老人病棟6:1基本看護(I) |
348 | 348 | 348 | 348 | 348 |
入院費の1日概算 | 老人患者 | ||||
一般病棟 | 2週間以内 | 2週間-1ヶ月 | 3ヶ月超 | 6ヶ月超 | 10月より |
2:1看護、正准比A |
1912 | 1547 | 1270 | 1229 | 763 |
28日以内 3:1 |
1601 | 1391 | 1124 | 1071 | 763 |
28日以内 4:1 |
1446 | 1236 | 969 | 918 | 763 |
28日超 4:1 |
1353 | 1236 | 1009 | 918 | 763 |
老人病棟一般患者 | 959 | 959 | 895 | 869 | 869 |
老人病棟老人患者 | 969 | 969 | 905 | 880 | 880 |
参考 | |||||
長期療養型病床 | 2週間以内 | 2週間-1ヶ月 | 3ヶ月超 | 6ヶ月超 | 10月より |
入院時医学管理料・老人 | 230 | 230 | 166 | 140 | 140 |
入院環境料 | 165 | 165 | 165 | 165 | 165 |
療養環境加算(I) | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
入院食事療養 | 192 | 192 | 192 | 192 | 192 |
特別食加算 | 35 | 35 | 35 | 35 | 35 |
療養2群入院医療管理料(II) | 761 | 761 | 761 | 761 | 761 |
入院費包括1日 | 1483 | 1483 | 1419 | 1393 | 1393 |