不公平な介護保険料は今後どうするのでしょうか
要介護認定の一次判定改訂ソフトの欠陥や問題点を説明をしましたが、このソフトを使用した一次判定では公平な認定を行うことは難しいと言えます。
もう一つ公平性を守ることが必要な介護保険制度で、公平な負担が守られなくなる大きな問題が起こっています。
それが、第1号被保険者(65歳以上)の保険料です。先日来年度からの山口県内各市町村の介護保険料の予測額が発表されました。それによると介護保険料は、県内の9割に当たる51市町村でアップする見通しで、改定後の県平均月額は3,600円台で、現行の平均保険料に比べ600〜700円上がるようです。平均20%アップと言うことです。
市町村の第1号被保険者の介護保険料の具体的な問題点を説明する前に介護保険制度の「保険料」について少し説明します。
介護保険制度の保険料
介護保険制度の保険料は、第1号被保険者<65歳以上の人>と第2号被保険者<40歳〜64歳の人>で、保険料の算定方法も、徴収方法も違っています。
そして介護保険全体の保険料の負担割合は図-1のように、国民の保険料負担はおよそ50%で(うち1号被保険者保険料は17%、2号被保険者保険料は33%)、国の負担25%、自治体負担25%(都道府県12.5%、市町村12.5%)となっています。予想外に第1号被保険者の保険料負担は少ないのですが、市町村によって高齢化率の高い町村と若者の多い市部とでは、1号・2号被保険者の割合がちがってきます。
図-1
1.65歳以上の人<第1号被保険者>
第一号被保険者の保険料は、在住する市区町村での介護サービスの水準や年齢構成により変わってきます。また所得に応じて下記のように同じ市町村内で5段階程度の差が設けられています。
保険料の支払方法は、原則として老齢年金からの天引きとなります。ただし年金額が年間18万円未満の場合は、市区町村が直接、個別徴収を行います。
所得による65歳以上の人の介護保険料
この第1号被保険者の保険料が、来年度より市町村によって大きく変わることになるのです。
2.40歳〜64歳の人<第2号被保険者>
第2号被保険者の保険料は、それぞれの加入する医療保険によって異なります。その額についてはその医療保険独自の算定に基づきます。
一方国民健康保険加入者は健康保険料に準じた所得割額・資産割額
・均等割額 ・平等割額 などを基準に決定されます。
保険料の支払方法は、現在支払っている医療保険に上乗せされ一括して徴収されます。しかしながら、それぞれの加入している医療保険(健康保険組合、国民健康保険など)によって、保険料や徴収方法は若干変わってきます。また、医療保険と同様に、事業主負担・国庫負担がありますので、一般には労使で半額ずつ負担することになります。
また第2号被保険者の介護保険料は,現行の老健拠出金のしくみと同様に,健康保険から社会保険診療報酬支払基金(支払基金)に介護納付金として納められ、支払基金が介護保険を運営する全国の市(区)町村に一律で交付することになっています。
健康保険の被扶養者も、40歳以上65歳末満であれば介護保険の第2号被保険者ですが、被扶養者の介護保険料については健康保険制度が全体として負担する介護納付金に含まれており、個別に納める必要はありません。
分かりやすく言えば、40歳以上65歳末満の夫婦の場合、妻が夫の扶養になっていれば妻の介護保険料は別に納める必要はないと言うことです。逆に40歳以上65歳末満の夫婦の場合でも、妻も夫もともに収入があり扶養でない場合には、別々に介護保険料を支払う必要があると言うことです。
政管健保の介護保険料
介護保険料率は,全国の第2号被保険者数や介護保険の費用をもとに毎年度決定されます。平成14年3月からの政府管掌健康保険の介護保険料率は1000分の10.7(14年2月までは1000分の10.9)で、一般保険料率1000分の85と合わせ,保険料率は1000分の95.7となっています。
平成15年3月以降の健康保険料率は変更されますが介護保険料の料率まだ決まっていません。
介護保険料はいくらになるのか
例えば政管健保の方で月額報酬30万円の場合、300,000X0.017=3,210となり、介護保険料は3210円と言うことですが、労使折半で本人の負担はその半額1,605円と言うことになります。ついでに健康保険料は1000分の85ですので健康保険料は25,500円で、やはり本人負担は半額の12,750円です。
従って給料天引きの健康保険・介護保険料は14,355円です。しかし多くの方が自分の介護保険料について知りません。労使折半で高額な天引きになっていないことと、40歳以上の扶養者の負担がないので負担感が少ないものと思います。
政管健保の場合、上限は月額報酬95.5万円までで計算し、それ以上報酬には負担はない仕組みです。ちなみに95.5万円の方の健康保険料は41,650円、介護保険料は5,243円ですので合計46,893円です。
ただこの仕組みを理解している方は少ないのではないかと思います。
具体的な話を進めるため我々の町の周辺の介護保険料を調べてみました。
玖珂町・周東町は隣町で生活圏もほぼ同じです。要介護認定も2町で合議体を作っています。
現行では介護保険料は100円程度の差でしかありませんでしたが、ここで大きな問題にぶつかりました。
周東町の介護保険料が大幅なアップになるのです。予測額は4500円/月ですので、現行の2933円/月に比べると1567円/月の大幅アップです。周東町でこれだけ大幅な介護保険料になる原因は、色々な状況が考えられ、その理由は別のページで説明していますが、その大きな原因は、ケアハウス・グループホームなど介護施設の急増と在宅サービスの増加、その入居者が住民基本法の制限で、全て周東町の住民となったことだと思います。
但しこうなることは予測できたのに自治体の対応が遅れた事が周東町の「誤算」だと思います。施設は出来ても入居者の住所が、元の市町村なら、在宅介護費もそれほど大幅な増加はなかったと考えます。実際周東町では玖珂町と比べて、高齢者の介護認定申請率も明らかに多く見られています。
そこで周東町を取り巻く市町村と介護保険料を比べてみました。表-1
表-1 予測 見込額 現行 増減
周東町 4500円 4450 2933円 1517円
周辺市町村
玖珂町 3000円 2945 2833円 112
岩国市 3600 3540 2940 600
美川町 3900 3997 3223 774
徳山市 3700 3560 2853 707
熊毛町 3700 3560 2830 730
大和町 3700 3650 2980 670
田布施町 2900 2800 2930 ▼130
柳井市 3300 3300 2850 450
由宇町 2900 2880 2835
45
(*15年2月28日 県介護保健室から発表された各市町村の見込額が公開されましたので、追加しております。)
隣の玖珂町は15年以降は円の2945円の予定で周東町とは月額1505円の差があります。その他周東町は、岩国市・美川町・徳山市・熊毛町・大和町・田布施町・柳井市・由宇町と9市町村が境界を構えています。(図-2)
その介護保険料は15年以降、田布施町と由宇町の2800円、2880円から、美川町の3997円まで、これまた各市町村で大きく違っています。
現行の介護保険料では、この周辺の地域の格差は月390円であったのが、来年からは最高1650円になるのです
図-2は周東町を取り巻く周辺の市町村です。
市町村の境界は、川を隔てたり、道を隔てたりですが、同じ生活圏で日常のつきあいをしている地域もあります。それなのに、道一つ隔てたら介護保険料が隣町の人と比べ月1600円、年間では19200円、夫婦なら38400円も差がつく事があるのです。ほとんど介護サービスは同じなのですから、この不公平はどう説明するのでしょうか。全国の各市町村・各県でも第1号被保険者の保険料は違いますのでおなじ事が起こっているはずです。
介護保険料は、40〜64歳は国が決め、65歳以上は市町村が独自に決める事になっていますが、これだけ大きな差がつけば、介護保険制度そのものの公平性に問題が出てきますし、今後介護サービス費用の報酬改定も行われる予定ですが、受けられるサービス・保険料・認定審査すべてに不公平な制度が続くならば制度の存続そのものが問われることになるかも知れません。
14年12月6日 9日一部修正
15年2月28日 県介護保健室から発表された各市町村の見込額が公開されましたので、追加しております。
介護保険ページに。