決 議
医療構造改革問題は、厚生省、与党医療保険制度改革協議会およぴ日本医師会の三者が
それぞれ改革構想を公表して本格的論議が始まっている。
日本医師会の改革構想は、各論にわたって具体案が示されているが、2l世紀の少子高齢
社会を迎えるに当たって国民が望む医療とは何かを原点に据え、(1)誰でも何時でも
何処でもかかれる医療、アクセスのよい国民皆保険体制の維持、(2)良質で適正な医療
の提供の2点を基1.本理念としている。
しかるに、厚生省案の根底に流れるものは、医療費総枠の増大を抑制しつつ国庫負担の
大輻な縮減を目指す構図となっている。このことは、医療の質の低下を招き、国民負担へ
の転嫁を強める姿勢は、受診抑制の現象を醸すとともに保険外負担の拡大増徴によって国
民皆保険制度の形骸化をもたらすこととなり、到底容認することはできない。
医療費とその財源を考えるとき、医療費については、人口の増加と急速な高齢化、医療
の高度化などによって一定の額は必然的に増加するのであって、これを国民所得の伸ぴ率
の範囲内に抑制するという方策は、医療費の枠を予め設けることに他ならず、国民の命と
健康を守る立場の医療の特質から妥当ではなく、その論理は排除すべきである。
また、医療に対する国庫負担については、国民皆保険制度に基づく一定のルールによる
国庫負担であって、国全体の税源を如何に配分するかの政策判断の問題であり、また、医療
に対する配分を公共事業等、他の分野に対する財源配分と同一の尺度で律すること自体理
に合わないものである。
国を挙げて、行政改革をはじめ6つの歴史的構造改革を実行しようとしているとき、従来
の国全体の投資配分を全面的に見直し、医療をはじめとする社会保障制度については、
21世紀の本格的な少子高齢社会に対応し得る適切な配分がなされなければならないと考える.
医療制度抜本改革に対するわれわれの対応は、さる9月から実施された薬剤の自己負担
制度を皮切りとして、次期通常国会と平成l0年度の予算編成期を控え、一刻の猶予を許さ
ない。
われわれは、この重大な時期に当たり、自らも世の指弾を受けることのないよう自律性
を高めるとともに、全会員が団結してこの難局を打開するため、日本医師会の方針と活動を
全面的に支持、支援するものである。
ここに国民医療を守るため、次の事項について政府に対して強く要求する。
記
1.医療制度を含む社会保障構造改革については、他の5つの構造改革と整合性を持った
改革が大前提であって、まず、国の行・財政改革の実行案を示すべきである.
1.社会保障構造改革に当たっては、社会保障の理念に立脚し.国の責務と負担につい
て改めてこれを明示すべきである。
1.医療制度の改革に当たっては.国民皆保険制度の堅持を基本とし、患者自己負担を
最小限にとどめ、いやしくも受診抑制に連なるような制度を排すること。
1.医療制度の改革に当たっては、医療技術と予防福祉等の行為が適正に評価される
診療報酬制度を確立すべきである。
1.医療制度の改革に当たっては、医療現場の実状に十分配慮するとともに、地域医療
を担う医療機関が安定して良質な医療を提供できるよう考慮すること。
1.医療制度の簡素化を図り、患者をはじめ国民がわかりやすい仕組みにすべきである。
上記、決議する。
平成9年10月30日
第131回山口県医師会定例代議員会