医療費の診療報酬明細書(レセプト)点数順位別構成割合
高額レセプトの医療費への影響推計
平成10年2月に日本医師会医療政策会議より「高齢社会における社会保障のありかた」と言う報告書が発表され、その中で少し古いデータでしたが、「医療費の大半は少数の患者に対する医療サービスによって消費されている」と言うショッキングなデータが公開されていました。
平成5年の資料による「医療費のレセプト順位別構成割合」として発表されたもので、私もはじめて日本の医療費の大半は高額医療の患者さんの数パーセントで占められていることを知りました。
この資料は別のホームページでも示しています
平成5年度レセプト点数順位別構成割合 26兆円としたとき
レセプト点数 総医療費の割合 医療費概算
上位から1%未満 26% 6.76兆円
上位より1%-10%未満 38% 9.88兆円
上位より10%-25%未満 14% 3.64兆円
下位75% 22% 5.72兆円
その後はこうした資料は発表されませんでしたので、新しいデータがどうしても知りたくなりました。
しかし個人的には資料の入手は困難で方法も解らず困っていました。
引用データは厚生省大臣官房統計情報部が公開している「社会医療診療行為別調査の概要」の平成10年6月の審査分資料を使用し、外来・入院別にレセプトの点数順位と医療費の関係資料が出来上がりました。
平成10年6月分のデータはインターネットでも厚生省は公開していますがレセプトの順位等はネットでは分かりませんでした。
その資料を基に外来と入院のデータを合計して平成10年度のレセプト順位別医療費の構成を私が推計しました。これらの推計は点数階級別の代表値をそれぞれ「中央値」で設定しているため誤差の発生は否定できませんが、厚生省発表の外来・入院の医療費の総額には大きな差はみられず、統計上の決定的な間違いはないものと思います。
これによって推計した結果は
しかし上位1%未満のレセプトとは月の診療費はどの程度かを見てみますと、このランクはおおよそ月40万円のレセプトと言うことになり1ヶ月の入院の診療費としては決して高いものではないことが分かりますし、月40万円を超えるレセプトは外来ではインターフェロンなど特殊な、高額な薬剤治療を除いて他にはありませんので、上位1%はほとんどが入院患者のレセプトといえます。
本当に高額医療(例えば月500万円を超えるレセプト)はどの程度あったのかは今回の資料では分かりませんでしたが、入院のレセプトで月100万円を超えるレセプトは約43700枚であり総レセプト枚数の0.1%でした。この月100万円を超すレセプトの使用している医療費は全体の約5.5%となります。
ちなみに上位5%では月の医療費は5〜6万円、上位10%は3〜4万円、上位20%とは25000円程度になります。
今回の調査では外来の1件あたりの平均診療費は1487点(14870円)、入院の1件あたりの平均診療費は32667点(326,670円)でした。これをみると金額だけみますと、一部の超高額医療費をのぞき高額医療費が医療費を圧迫しているとも言えないことも分かります。普通の診療費だと思っているのも上位なのです。
そこで外来と入院別のレセプト数・医療費の割合を見ると(詳しくはエクセルの資料を参照下さい)
平成10年6月審査分外来・入院別レセプト数と医療費
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これらの資料は下記のURLにありますので、ダウンロードしてご覧下さい。ほぼ間違いないと考えていますが、これらの資料の細目は正式なデータとして公開されてはいませんので結果も推計値と言うことでご理解下さい。
お気づきの点や問題がありましたら個人的にお知らせ下されば幸いです。
生のデータを見ると他にもいろんな捉え方が出来そうですし、このようなデータの処理の難しさも実感できました。
次のホームページ「日本の医療費の実状」をご覧下さい。
生のデータも公開しております。
資料作成にご協力いただいた方たちにお礼申し上げます。
平成12年12月26日 玖珂中央病院 吉岡春紀
27日 一部加筆
「日本の医療費の実状」ページに